古野まほろ『天帝のあまかける墓姫』幻冬舎

ネタバレ注意。
版元を移っての天帝シリーズ再開幕、今回の舞台は帝国政府専用の超音速旅客機「おおろら」。
せっかくの豪華舞台なのに、略語の多い機内図がうまく読み取れなくて切歯扼腕していたけれど、でもまあ雰囲気は味わえたと思います。読み終えてみればストーリィやロジックの細部をいまいち思い出せないが、このシリーズはまあエクストリームなエンタテインメントとして楽しめればそれでよし。ジョジョネタが好ましいのと、なんと言っても妖狐揃い踏みは神々しくてございます。
あとは本格としてのロジックに対するスタンス。

「(前略)契機(きっかけ)は何でもいいんですちょっとしたもので、そのちょっとしたものへの気付き、それによってあるいはそれを軸として世界が動く、ロジックが大きく動く、これですよ、当該気付き自体が吃驚する様なおどろおどろするような呆気にとられるものである必要性はない、それによって、ああ、世界がこんなに動き始めてるんだという、その小さな小さな気付きからロジックがこんなに展開できるんだという、それが真物(しんもの)の驚愕ですよ、そうした煌(キラ)めきの美しさ、それを軸にした世界の再編のあざやかさ、ああ、こんなに耀けるものが精緻に隠微に隠されて――という感動(後略)」
(276-277p、括弧内ルビ)

というまほろの述懐には大いに共感するものだけれど、この作品はしかしロジックがそのおどろおどろしい特殊状況に規定され過ぎているように感じたのも事実。その意味で俺は前作のが好みだったかなーと思う。
評価はB。

天帝のあまかける墓姫

天帝のあまかける墓姫