有栖川有栖『闇の喇叭』理論社ミステリーYA!

ネタバレ注意。
ワケあって理論社を読む。
第二次大戦後、南北に分割統治されてきた現代日本、という架空史に展開するジュブナイル・ミステリ。
架空史のディテール・批評性も、「探偵」の存在論も、やや踏み込みが甘いように思われますが、同時にカリカチュアに止まった世界観を気軽に楽しく読むこともできます。本格としては、物理トリックは置いておいて、人物入れ替わりについてはシンプルにまとまっていて好感。
一般文芸より自由なジュブナイル・レーベルで、だからこそのラディカル狙ってみました、という身振りながら、結局ジュブナイルの範囲を逸脱しないものになってしまっているのは、個人的には有栖川の「愛らしさ」と捉えていますが。これが麻耶だったり森博嗣だったらまた評価軸が違うのだけど。
だからそういう試みの受け皿としてもいいレーベルだったと思うし、装丁・造本も面白いので惜しかったですね。理論社はアレ以来アレな話ばっかりで。
評価はC+。

闇の喇叭 (ミステリーYA!)

闇の喇叭 (ミステリーYA!)