梓崎優『叫びと祈り』東京創元社

ネタバレ注意。
ミステリーズ!新人賞受賞作含む、デビュー短編集。年末のランキングを席巻していて、面白そうだったので読んでみました。出た時から版元の営業さんはイチオシしていたけれど。
広大な砂漠、風車の聳えるスペインの田園地帯、不朽の聖死体を祀るロシア聖教の寺院…世界各地を巡る主人公の青年が、その行く先々で事件に遭遇する連作短編集。
多種多彩なロケーションとシチュエーションがまずアガる。さらにはそれぞれの「世界」の特殊な論理に不可分なホワイダニットと、小粋な叙述トリックが、本格ミステリの結構として精緻に凝らされている。新人としては驚異的なレベルで、品質は高い。
ただ、称揚されている文章力とロマンティシズムは、俺は肌に合わないように感じました。特にラスト「祈り」は鼻についてしまって、こういう閉じ方なら無理に連作にしないで、独立した短編でもよかったのでは、と。でも創元はこういうの好きだからねえ。
「祈り」が最後だったので、この人量産きくのかな…と無駄に心配になったりもしました。でも、今後要注目の存在であることは間違いないと思います。古泉迦十みたいな長編を…なんて、それは過大な期待かもしれませんが。
『崑崙奴』が、読みたいんだ俺はとにかく。
評価はB。

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)