雫井脩介『白銀を踏み荒らせ』幻冬舎文庫

ネタバレ注意。
アルペンスキー界を舞台に、蔓延るレイシスト組織の陰謀を打ち破る冒険小説風味のクライム・ノヴェル。
紀行興味をまじえながらテンポ感は抜群、秘密組織的な敵の設定も派手で戯画的、笑ってしまうようなハチャメチャアクションシーンもあり、『栄光一途』から引き続き出演の武道系女子のコンビもコメディ的にいい味出してて、エンタテインメントとしては性能の高い、楽しめる小説でした。
アクションシーンなんかは映像化に色気がありそうだけど、『ホワイトアウト』なんかよりは遥かに面白くなりそうだよ。模倣犯の思惑とか、衆人環視における犯人へのアプローチとか、ミステリとして面白みのあるロジックや演出も見られた。
やっぱこういうエンタテインメント・ミステリ書かせると巧いと思う。何度も言うけど『犯人に告ぐ』のあのつまらなさ、やっぱ社会派硬派気取りじゃなく、持ち味に忠実に、ハジけた方がいいんじゃないかな。
評価はB。