ネタバレ注意。
最初に言っとくけど、めちゃくちゃつまらなかったです。
猟奇的なサイコホラーと見せかけて、観念的なSFホラーへと帰着する、その手つきはいかにも節操なく思えるし、キャラクタはどいつもこいつも短慮かつ直情的で不愉快。安っぽい文章にはリズムというものが欠片としてなく、のたまわれる蘊蓄や衒学、示される思想やパラダイムにもまったく中身がない。
現実はある意味で、夢のようなものだという説がある。それは睡眠中の夢が少し固定化されただけのものだそうだ。その現実をつくっているものは個人や集団で考える想念だ。人間はいつもあたりまえのように現実を続行しているが、実はこんなことは創造主的なすごい力がなければできないらしい。つまり、普通にのほほんと生きているだけでも、人間はすごいことをしているということだ。
(下巻187p)
…900ページ近くもこんな知性のない文章読まされてごらんよ。《説がある。》じゃねーっつのw
で、《悪意》の権化という提出をされている中心的な「存在」が、人から人に乗り移って暴虐の限りを尽くすんだけど、最終的には主人公の恋人に寄生して、でも結局その状態でセックスしたら愛のパワーで消滅、という処理にも冷笑したけど、なにより《悪意》じゃなく単なる捕食・生存本能にしか思えない、その書き方が最大の問題。「純粋悪」というようなものを主題にした小説は結構あるけど、これはその中でも最低レベルというか、主題までに至っていない。《涙》だの《アナザヘヴン》だの、そこから派生するロマンティックな単語にも、だからまったく説得力がない。
解説は綾辻がやってるけど、この人よくこういうわけわからんのに引っ張り出されるよね。『空の境界』なんかもそうだったけど、「書かされてます、ホントは気に入ってないです」感が分かりやすくて、なんだか笑えます。
評価はC−。
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