野沢尚『龍時 02-03』文春文庫

ネタバレ一応注意。
二巻め。さてはよっぽど2002年にあった諸々にご立腹でしたねw
いつの間にやら、リュウジくんはベティスにレンタル移籍しています。作中でもその活躍が印象深い、ホアキンデニウソンという両ワイドを擁したこの頃のベティスは確かに魅力的なチームだったし、筆致の端々からスペイン大好きっぷりが窺われる作者の嗜好からして、このチームを描いてみたかったのは分かるけれども、ジャンプアップはいささか性急だった気もして。アスンソンなんかもかっこいいし、ハイライトのセビリア・ダービーも含めてゲームも盛り上がっているけど、それこそセビージャあたりで苦闘するとか、デポルティボバレロンの陰に隠れるとか、もっと「雌伏」の展開があってもいいんじゃないかなーとは思ったな。まあ商業的な意味でもそれが難しいのは理解できるけれど。
あとちょっと気になった点があって。今さらだけどこの小説、視点があくまでリュウジに止まっているから、ゲームをある程度俯瞰で描写しなければならない以上、リュウジの視点には本来の彼の性格付けとはやや乖離する客観性が、それが必要とされる場面を離れても貼り付いていて(あるいはそのように感じられ)、それがたとえばロマンス描写の時なんか邪魔なんだよね。マリアとのロマンス、どうでもよかったもんな。
…まあ、そんなの枝葉だと言われればそれまでだし、その解決を小説的達成として読みたかったとか思っても、悲しいけれど詮無いことで。
あと一冊、丁寧に読みましょう。
評価はB−。

龍時02‐03 (文春文庫)

龍時02‐03 (文春文庫)