柴田よしき『Miss You』文春文庫

ネタバレ一応注意。
女性文芸編集者を主人公にしたサスペンス。
多分楽屋ネタが結構含まれてると思うんだけど、作家と編集者という狭小な「ギョーカイ」模様はよく描けていてとても興味深い。就活の時のシンドさをちょっと思い出してしまったけど、こういう仕事無理だわ、俺。もう負け惜しみを恥じる気すらなくなった。新潮社はいいとこまでいったんだけどなあ…ってやめよやめよ。
で、この作家の作品語る時に結構な確率で「リーダビリティ」という単語を使っているんだけど、やっぱ「読ませる」力はある作家です。ワーキング・ガール小説ではなく純粋にサスペンスとして読んでも、主人公に降りかかる諸々は謎めいてスリリングで、引っ張られる。結構厭な話だよ、これ。
ただ、明白に相容れない部分も相変わらずであったりはする。プロットは全体的に御都合主義の傾向があって高く評価することはできないし、ジェンダやセクシュアリティの取扱いも軽薄だと思う。出せばいいってもんじゃないだろ、こういうのは。
そしてその最たるものは、やっぱ「男」の描き方なのです。主人公のフィアンセの男がどうにもこうにも愚かしくてならず、この作家はどうしても男を子供じみて描きたいんだなーと鼻白んでしまうのでした。
評価はC+。

Miss You (文春文庫)

Miss You (文春文庫)