花村萬月『眠り猫』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
やっぱ平均点高いなあと。面白かったです。
美点はさんざん書いてきたので繰り返しませんが、この小説でも、主人公と周辺のキャラクタたちの心地いい距離感や、ドラッグなんかも絡む性愛描写の、エロティックで、でも不思議と下劣さを感じさせない書き方には感嘆させられることしきり。巧いっつーかキャラだね、もうこれは。
で、特筆すべきシーンがあって。心身ともに満身創痍のタケが由子の店を出て、ジャズ喫茶の店内に目をやるシーン。これだけ最小限の描写で、これだけ胸を締め付ける健気さを演出されたキャラクタが、かつていただろうか。ジャズ喫茶の若きママには、名前さえも与えられていない。なのにめちゃくちゃいとおしかったです。
評価はB。

眠り猫 (新潮文庫)

眠り猫 (新潮文庫)