柳広司『百万のマルコ』創元推理文庫

ネタバレ一応注意。
マルコ・ポーロが、フビライ・ハーンの下で体験した奇譚を囚人仲間に語り伝える連作短編集。
「ジャングルを探検していた冒険家が、現地の部族に捕えられた。神聖な森への侵入は死を以って償わなければならないという。しかしその長は自らの寛大を示すため、冒険家にひとつのチャンスを与えた。地下処刑場にある二つの扉。ひとつは人食い鰐が蠢く地底湖にまっさかさま。ひとつは明るい太陽が待つ地上への脱出路だ。それぞれの門には一人ずつ門番が立ち、一人は常に真実を、もう一人は常に真実とは逆のことを話す。どちらがどちらの門に立っているかは分からない。冒険家は、どちらか一方の門番に、たったひとつだけ質問をすることが許された。彼が再び生きて太陽を仰ぐためには、いったい何を問い、そしてどう行動するべきであろうか?」
…というようなクイズを、小学生時代に回りに話しまくっていたような気がします。こうしたワクワクする異界感が満載の、なんとも楽しい「とんち連作」と云える作品。
それぞれのネタは正直他愛ないものも多いし、果たしてこれがマルコ・ポーロ的なのかと云われれば微妙だし、今までのこの作家の「偉人探偵モノ」の完成度からしてもったいない感もありますが、こうした世界観を構築してロジックを限定する手法に問答無用に弱いのだろうな、とこの満足感を自己分析します。西澤とかキッド・ピストルズとか。
作品の評価はB。

百万のマルコ (創元推理文庫)

百万のマルコ (創元推理文庫)