ネタバレ注意。
歌舞伎、能、バレエなど、古典芸能から着想を得た短編集、二冊八編の合本。
着想元に素養があれば、さらに味わい深かったであろうと歯噛みしつつ、連城っぽくも皆川っぽくもある作品世界を堪能しました。耽美性と下世話さの釣り合った小説作法に、作者らしいトリッキィさも多彩に発揮された、なかなかに得難い作品集でした。
「月下の蘭」はよくあるサスペンスがホラー的に転回する意外性で魅せられたし、「宵闇の彼方より」の地方の朽ちた病院という舞台立ても素敵だったし、「殺人はちょっと面倒」のまさかのスカしにもマジかよ、つって笑ってしまったし…という好編揃いの中でも、ベストはやっぱ「夜のジャスミン」かな。事件に至る背景も嗜好ズバリだったけど、それですっかり目を眩まされてしまったな…個人でアンソロジィ組むなら入れるわ、という、オールタイムベスト級の佳品でありました。
蔵書残留決定。
評価はB。