『桐島、部活やめるってよ』

DVD。
決して悪い意味ではなく、思いっきり「肩すかしを食う」独特な余韻を持つ作品ですが、青春映画としては間違いなく、ウワサ通りの快作でありました。
高校生の日常の数日間において、「桐島」という存在をめぐって(あるいはめぐらずに)、何人かの登場人物の視点が少しずつ重なりながら時系列を行き来して描かれる、特徴的な構成の映画です。やっぱ個人的な嗜好として、こういう構成であれば「桐島」について、あるいは錯綜する時系列に忍ばせて、なんらかのサプライズやどんでん返しでも仕込まれているかと期待して目を凝らしていたのですが…別にそういうことではなく。「肩すかし」というのはそういう意味です。
映像感覚、脚本、若い俳優陣の演技、いずれも過不足なく、前のめりでもトガりすぎでも狙い過ぎでもない適度な距離感があって、それが心地よく彼らの日常と非日常にシンクロさせてくれます。そしてそうした中に浮かび上がる何か、名付けた途端に暑苦しくて、ここにある高校生たちの姿と乖離してしまう、でも確かに作品の芯として感じられるメッセージを、クライマックスのゾンビ映画シーンとラストの余韻において観る者に掬い取らせることに成功している、そういう意味での「快作」です。
キャストで言えば、特に宏樹の造形に成功しているのは快挙だと思います。ラストの余韻において彼の果たす役割は無限大に大きい。あとは竜汰が好きだったな。「誰も俺の帰宅を止めることはできない」みたいなセリフが最高だった。同じ部活だったしね、俺…などと字面だけのシンパシィも虚しく、彼が担う作中最大のどんでん返し、あんなサプライズの主役にはなりようがなかったけれど。

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)

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