『カポーティ』

年末年始のDVD鑑賞その3。
「史劇」のコーナーに分類されていたのですが、なるほど文芸映画という感じで、落ち着いた色調と音楽の心地よい作品でした。
しかし内容は落ち着いてはおらず、カポーティが『冷血』を書き上げるまでの重苦しい葛藤や苦悩、天才ゆえの不安定が、重苦しく封じられた作品となっております。
泰然と余裕ぶった天才作家が、興味をそそる取材対象に出逢い、それを突き詰めていく過程でまた自身の「冷血」に追い詰められていく、一種の(キングめいた)「作家ホラー」とも言えるでしょう。最終的にはテロップで「その後彼は一作も作品を完結させなかった」とかだもの。アル中・ヤク中だしなこの後。ペリー・スミスとの距離を見失っていく過程はやや説明…というかエピソード不足とも感じられましたが、ウソのドラマは足せないだろうし、ノンフィクションとして見ればこういうもの、天才作家も人の子だった、という落ち着き方なのですかね。
フィリップ・シーモア・ホフマンはさすがアカデミー主演男優賞、ハマリの上にもハマリ役。最初は「犯人には興味がない。町の変化を描きたい」みたいなこと言ってた作家が、徐々に犯人そのものにのめり込んでいく様は、原作を読んだ時の印象にも説得力を与えられたようにも思いました。これならペリー・スミスはああいう書き方になるよね。ホフマンはそれをこれ以上ないリアリティで表現しています。
予定通り暗くなったので、次は明るい映画を観る予定。