太田光『マボロシの鳥』新潮社

ネタバレ一応注意。
初の小説集、あれだけ文学的素養があって、そして単純に好きなので期待していたのですが…ぶっちゃけ、つまらなかったです。
「甘っちょろい」という印象が、なんだかずっとモヤモヤとして付いて回ります。「自爆テロ」とか「魔女狩り」とか、人類における「悪意と悲劇」*1というテーマ、それを真正面からとりあげようという、意思も気概も買いたいのだけど。
でもそれなら、この程度のドラマ性でいいの? と思うのです。もっと派手に、ドラマティックに、なんだったらベタなお涙頂戴ブチかましてもいいんじゃないの? と思うのです。なんだか物語や想像力が抑制されすぎているように感じる*2し、心中の意思の問題だけに止めてしまっては、せっかくの勇気あるテーマがもったいないと思うのですけれど。
でもそうした玩羞も、太田光らしいと言えば言えるのですけどね。今の文章・構成力じゃ若干きついかもしれないけど、長編を読ませてほしいです。敬愛するアーヴィングばりのやつを、ぜひ。
評価はC。

マボロシの鳥

マボロシの鳥

*1:マリス・ミゼル、ってか。

*2:もしこれで限界だったら、ちょっと残念なものがある。