『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

今の俺に休日は貴重なのですが…。
そういやベッドの下にまだ二本VHSが残ってたと思い出し。コレと『裸のランチ』。有名な鬱展開にオチるか、前衛映像に欠伸するか。選んだのは前者で、そして見事にオチています。休日を平穏に過ごしたいなら観るべき映画ではない。
貰ってきた吹替版のVHSで、でもさすがにミュージカルシーンは生歌で(当たり前だ)。でも何気ないハミングの部分とか、そういうのもビョークの生歌で聴きたかったとは思いながら。
これでもかと叩きつけられる人生の苛烈や険峻、そうした救いのない鬱展開のストーリーにかぶさるミュージカルシーン、その中心のビョークの歌声は、そうした暗黒に射す「救い」としてではなく、いついかなる状況にあっても逃れることのできない、「業」としての音楽を見事に描き出している。それは作中、ジェフによってなされるミュージカル批判…「なぜ突然歌いだすのか意味が分からない」…に対する回答であるだろうし、メタ・ミュージカルとしてこの作品のありようを評価することもできるだろう。どんな暗黒の中にあっても、業を背負って踊り続けるしかないという、その主題は終盤の107歩のステップになにより明瞭だ。
そしてセルマのいっそ独善とすら感じさせる献身の信念が、終盤をますます陰々鬱々たるものにしている。俺はどっちかにしてほしいと思ったけどね。「母性」なんて宿業まで絡んできたら、自縄自縛ですよ。実際セルマはそうだけど。映画まで窮屈になっちゃった感じもして。

ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]

ダンサー・イン・ザ・ダーク [DVD]