ネタバレ一応注意。
名古屋から出てきた18歳が、浪人して、大学入って、中退して、まず下請の代理店から、やがてコピーライタとして自立する。著者の投影とおぼしい青年の、「東京・青春グラフティ」を連作短編で。
ストレートな青春小説でありビルドゥングス・ロマンだが、このテの小説にはいまだセンチメントをいたくくすぐられる。学生時代に戻りたくて仕方がないんですね。名古屋→東京じゃなくて俺は山形→名古屋で、この小説では郷愁の対象である土地が俺にとってはなんとかして自分を溶け込ませるべき「都会」だったから、まあ微妙は微妙だけど。
年代的には、バブル前期に青春を送ったオジサンたちに向けて、そのノスタルジィ刺激が眼目だろうが、普遍性も十分あると思うので媚びてる感じはしない。上京初日の寄る辺なさとか、よく描けてるね。女性キャラも皆魅力的だし、今まで読んだ奥田作品では一番良かったかな。
評価はB。
- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: 文庫
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