五條瑛『スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙』集英社文庫

ネタバレ注意。
昔ボロクソに酷評した『プラチナ・ビーズ』の続編ですが、前作よりは全然読めました。前作の「サーシャ」さんというメインキャラに費やされたものより、「あくまでも比較の話として」淡白な描写がメインだからでしょう。
しかしいくら淡白とは言っても人物造型の短絡は相変わらずで、今回の中心人物である「北の工作員」の形容に、《人間的魅力に溢れているタイプ》ってのはいくらなんでもあんまりだろう。家族愛の美しさをこれでもかと言わんばかりに押し付けてくる物語にも多数箇所で辟易してしまう。淡白ではあるけど、慎みはない。
というわけでどうしても酷評になってしまうが、多少の慎みを覚えた方が良かろうとは思いながら、平易な文章と多視点を切り替えるスピード感で、700pをさらっと読めるのは美点である。ただ物語のダイナミズムに乏しい、最後まで重量感・手応えというものを感じさせない、という見方に立てば、その「さらり」ぶりは欠点でもあるだろう。
まあ好み次第ってことで、俺はいい読者でないことは明白だが、いかんせん本いっぱい持ってるんだよねえ…。蔵書整理キャンペーン中なのだ。
評価はＣ＋。

スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙 (集英社文庫)