eastern youth 『地球の裏から風が吹く』

九枚目。
たとえば『感受性応答セヨ』にあったような疾走感を兼ね備えた泣きメロの連打、『DON QUIJOTE』にあったような多彩な音像はない。ただここにあるのは、珠玉の詩情と、それを包み込むようにしてあるロックの滋味である。

薄暗い何かが
また一人、誰かを
何処かへ連れて行く
行かないでくれ、
小さな声で
背中に投げかける
真昼の街で
(「白昼の行方不明者」)

大丈夫だ
大丈夫だぜ
真昼の月が見える
さすらう詩が見える
大丈夫だ
大丈夫だぜ
悲しみを消さないでくれ
涙を捨てないでくれ
滲む入り日を
忘れないでくれ
(「サンセットマン」)

時に何かを噛み締めるような、時に飲み下すような、時に引き絞るような吉野の「うた」は、常にその「さすらう詩」情をそのままに伝える。そしていつにも増して「泣き」の成分が強いギターの唸り。熟練のリズム隊の仕事がそれを、滋味に満ちたロックミュージックとして、表現の地平に開いている。
その詩情は孤高のものだが、《大丈夫だぜ》という一語にここまでの深みと迫真性を持たせられるバンドはいない。そこにこそこのバンドのマジックと、一心に受けるリスペクトの源泉があると思う。
孤高の詩情と、無二のスケール感。イースタンユースを堪能できるアルバムである。

地球の裏から風が吹く

地球の裏から風が吹く