LOST IN TIME 『さぁ、旅を始めよう』

とりあえず、だ。
父ちゃん、ありがとぉぉぉーーーーっっっ!!!(絶叫)には度肝を抜かれました。あ、「背中のバラッド」って曲の話ね。
「旅立ち前夜」って曲は海北があまりにも自分の声の「エモさ」に自覚的な歌唱に聴こえ、それがどうにも受け付けなく、あーこういうトゥーマッチ・ドラマティックな方向に行くんかいなと危惧を持って聴き始めたのです。しかし続く「最後の一球」は海北のエモーショナルな声と最近のロストのドラマティックな音作りが、ベタなれどベタとしての理想的なバランスで結実した名ロック・バラードだったので、その不安は早くも払拭。「26」「車輪の下」あたりも「約束」あたりの音像を思い出させて好感触でした。あ、ちなみに曲順追ってます。「翔び魚」「カッターナイフ」でネクラフォークという新たな地平を開きw、「然様ならば」はシンプルなバラード、その後の「雨が上がって」「されど犬走る」は極端に音を絞ってのクッションでしょうか、その後の長渕に向けての。

なぁ親父よ いつかみたいにブン殴ってくれないか
このままじゃ俺はあんたを越えられねぇ
(「背中のバラッド」)

…いやまあ、アリかナシかで云ったらナシだが。
いろんな曲入ってますよ、このアルバム。ちなみに「いつかみたいにブン殴って」あたりはセリフ調ね。
でもその後は「鼓動」「さぁ旅を始めよう」「告白」「まだ故郷へは帰れない」と、カラーは違えどそれぞれ必殺級のロック・ナンバが並び、怒涛のラストスパート。
非常に濃密なアルバムですが、散漫な印象もまたあり、洗練とは程遠い。あまりにも規格外にエモーショナルなヴォーカリストを擁するため、ルーツであったパンクやエモコアのフォーマットを逸脱せざるを得なかったバンドの「旅」が、ここから「始」まるというところなのでしょう。
ただ俺は正直ストリングスとか入ると「何狙ってんだよ」と身構えてしまう部分があるので、シンプルな音にどうしても魅かれてしまう。このバンドはそういうサウンドにもいまだ凄く魅力を持ってると思うけどなあ。『群青』の三曲は未だに奇跡だと思うけど、「告白」なんかも凄くいいよ。

迷路の出口は 君の笑顔だった
音色の理由は 君の涙だった
迷路の出口は また新たな入口で
それでも答えは 君の笑顔だった
喜びも 悲しみも 全て決して捨てるな
(「告白」)

さぁ、旅を始めよう

さぁ、旅を始めよう