鵜林伸也『ネクスト・ギグ』創元推理文庫

ネタバレ注意。

ライブハウス周辺で、人気バンドのメンバが連続して殺される事件を描く長編。

うーん、これはキツいなあと思った。これ読んだ後だともう「その音楽」の名前を口にするのも恥ずかしいけど、それに30年親しんできた身としては、ここで描かれる「その音楽」のすべてが痛々しく感じられて、ああこれが共感性羞恥というやつなのかと震えた(多分違う)。

蘊蓄や固有名詞の類もすべてが入門書の引き写しみたいだし、「その音楽」に関わっている登場人物たち、誰一人として魅力を感じられない。人が死んでんのに「ロックとはなにか?」じゃねえだろ気持ち悪い。

クスミがエフェクタ触ったことないって話が成立するのかどうか、疑問に思いつつ断言できない浅学の身ではありますが、同年代でおそらく同時代的にミステリとロックに惹かれ続けてきたのであろう作者の作品として、残念という以外になかったです。

フーダニットは丁寧にやられていると思うのでDは回避しますが、犯人は一人だけ如実に伏線テンコ盛りですね。

評価はC-。