江國香織『ホリー・ガーデン』新潮文庫

ネタバレ一応注意。
幼馴染の二人のアラサー女性の友情(?)と恋愛を描く長編。
正直ものすごくまどろっこしい小説だったので、読んでて愉快でなかった。果歩と静枝を中心に、生活とその追憶のディテールが様々に執拗に描かれるのだけど、それらのどれほどが小説に実を結んでいるのか甚だ疑問だった。
あとがきでは「余分なことだけでできている小説が書きたかった」とのことが述べられていて、確かにそれは実現しているけど、それにしてもそれらの描写と、主人公や周辺の人物の、唐突だったり尖っていたり、あるいは逆にふわふわしてたりする感情や思考が乖離していて、読んでてまったく同調できなくて、居心地が悪かった。
特に挙げれば、最初から描写放棄されてる津久井はともかく、芹沢はまったく魅力的に見えず、だから静枝の盲目的な恋愛感情にもまったく移入できなかった。「象足」さんっていう侮蔑的な名前で呼ばれて、時々出てきては狷介を撒き散らすだけの女性とか可哀想以前に存在の意味が判じ難く、また果歩がそれに対して何故かかわいげらしく思っているらしい、その上から目線も理不尽で不快。あと中野、《夜中の街は台所に似ている。》(35p)とか、全然上手くねーからな。
裏表紙には《心洗われる長編小説》なんて書いてあるんだけど、俺には苛立ちが募っていくだけの読書だったよ。
評価はC−。

ホリー・ガーデン (新潮文庫)

ホリー・ガーデン (新潮文庫)