志村正彦『東京、音楽、ロックンロール』ロッキング・オン

ネタバレ特になし。
今頃になって、(しかも「完全版」じゃないのを)後輩から借りました。
ブログ日記に、注釈的なインタビューを加えて書籍化した本。
驚くべき普通さ。普通に悩んで、スランプ吐露して、劣等感抱いて。瓢々としたイメージの強かった人だし、もっとワンマン然とした部分、才気逸った部分があるのかと思ってたけど、そんなことなかった。思えば初めて観たライヴでも、僕は勝手にアート木下みたいな自閉キャラを想像してたら普通の好青年で驚いたものでしたが、そうした普通の感覚、単に音楽を愛する一人の青年の日常の感覚が刻まれたこの日記が、たとえば自画自賛している「赤黄色の金木犀」や「若者のすべて」の、見事に普遍的なセンチメントの達成に、説得力を与えているように思います。まあ一方で、「花屋の娘」の変態性に説得力を与えてしまっている記述もあるけれどもw でもなあ…身体的な不調に自覚があるなら、もっとケアの仕方があったんじゃないかとも思うけど、それこそ詮無いね。
夏の終わりには「若者のすべて」を、秋になったら「赤黄色の金木犀」を、それぞれ聴きながら街を歩くんだという自画自賛は、とても微笑ましいし頷けるものです。才能のあるミュージシャンである以前に、音楽を愛し愛された一人の青年のことを思いながら、僕もそうして歩き続けるでしょう。季節の感傷を見事に掬いあげた、美しい「ロックンロール」と共に。
今頃はやっぱり、「桜の季節」かな。
評価はC+。

東京、音楽、ロックンロール

東京、音楽、ロックンロール