奥田英朗『ウランバーナの森』講談社文庫

ネタバレ一応注意。
世紀のポップスター、「ジョン」の軽井沢での隠棲と、そこでめぐりあう不可思議、それを通じての再生を描いた小説。
ナイーブなポップスターの煩悶はコミカルで、作中に流れる時間のおだやかさとあいまって、心地よく読める小説ではあった。プロットとしては若干安直ではあるが…。
世代じゃない僕は、どうしてもビートルズジョン・レノンの史料として読んでしまう部分が大きかったけれど、本当は「ウランバーナ」の情景に見られる様々な日本的な風情を、異邦の天才の目を通して再発見する、というあたりに価値のある小説ではないかと思います。
こないだ厭らしかったビートルズ礼賛の気配は感じられなかった。そういうところは巧い作家ですよね。
評価はB−。

ウランバーナの森 (講談社文庫)

ウランバーナの森 (講談社文庫)