本谷有希子『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』講談社文庫

ネタバレ注意。
ふーん、という感じ。文体としては意外に素直で、それなりに迫力とスピード感は出せてるけど、ちょっと物足りなかった。本来劇作家であり演出家である作者に、文体の妙など求めるのは間違っているのかもしれないが。
ただそれならさらに問題なのが、小説の中核となるプロットの方であって。自意識の暴走であるとか、田舎の家族悲喜劇であるとか、ミステリやホラー、コメディとしてならまだしも、少なくとも純文学として読まれる可能性のある作品として、あまりに古臭いのではと感じた。
そうだから、文体で面白みが出せる題材ではある。あるいはキャラ立てで、つまりエンタテインメントとして振り切るのであれば。しかしなんだろ、純文学として読まれたがっているがゆえの歯切れの悪さが、どこかしら冴えない筆致から窺えた。
なんだかシュールなラストシーンだけ面白かったので、もう数作は読んでみようと思う。
評価はC。

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)