横溝正史『幽霊男』角川文庫

ネタバレ注意。

東京を跳梁する「幽霊男」による、ヌードモデル連続殺人を描く、金田一耕助シリーズの長編。

「それじゃ、あんたはきょうここで、何か起こるだろうということを知ってたんですか」
「まさか。……はっきり知ってたら、なんとか予防策を講じますよ。しかし、まあ、なにか起こるんじゃないかという、漠然たる予感はあったんですね。それがまんまと犯人に先をこされたんだから、金田一耕助、面目丸つぶれというわけでさあ。あっはっは」
(149p)

あっはっは、じゃねえんだよ毎度おなじみ役立たずが、とむしろ笑えてくるぐらいですが、日本探偵史上屈指の無能より、作品じたいの不出来にこそ腹が立つ、これまで読んだシリーズ中の最低作。安っぽい怪奇趣味、通俗趣味を漫然と垂れ流しただけの、本格はおろか、ミステリの名にさえ値しない駄作でした。

評価はC-。