内田百ケン『第一阿房列車』新潮文庫

ネタバレ特になし。
家庭内読書会「古典的名作を読もう」企画、第14回課題本。
百ケン先生と友人のヒマラヤ山系君が、目的を持たない列車旅行に出掛ける紀行文学。「ケン」は言うまでもなく門構に月ね。
ずっと読みたいと思っていたのだけど、百ケン先生の語り口がやはり出色です。頑固だけれど瓢然ともしていて、なんともいえない「おかしみ」と「愛らしさ」のある軽妙洒脱の語り。漱石直系の「文士」たる風情があって、もっと時代を遡ったまさに「古典」の風格ですが、描かれる時代は戦後勃興期、そうしたどこか戯画的であるバランスも面白いところです。
優秀な事務方でありながらも口を開いて百ケン先生との絡みは意味不明なヒマラヤ氏はもちろん、どこから聞いてか旅行の度に駅に現れて餞別を置いていく夢袋さんなど、脇のキャラクタにも味があって。新潮文庫版は三分冊らしいけど、こうしたキャラにこの後展開があるのか気になるところ…まあ、ないだろな。
まあでも根本的に、百ケン先生のルックス、ウチの祖父ちゃんに似ています。表紙の車掌コスプレも愛らしい、そんなところが好感の持てる一番の理由なのかもしれません。
評価はB。

第一阿房列車 (新潮文庫)

第一阿房列車 (新潮文庫)