木村元彦『誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡』集英社文庫

ネタバレ特になし。
生い立ちからフットボーラとしてのキャリアを追い、ユーゴ紛争と制裁、来日を経てフランスW杯、ユーロ2000に至る、ドラガン・ストイコビッチの伝記。
いちフットボーラの伝記として、たとえば試合シーンの臨場感も質の高いものでありつつ、これは東欧情勢の現代史的な史料としても、「スポーツと政治」、あるいは「スポーツ・スキャンダル」に対して批評的な読み物としても成立している。
指導者との確執、あるいは異文化での懊悩*1、そうしたものも含め、妖精*2と呼ばれ華麗を極めたフットボーラが、いかに苦難の道を歩み、その度に多くは自分の力によってはどうにもできないことによる翻弄に抗してきたか、その拠所として、タイトルにも掲げられた「誇り」…過去の栄光にではなく現在の姿にこそあると語られるところの…が、確かな説得力をもって輝かしい好ルポルタージュです。
こういうレジェンドを得られた、名古屋のサポータは幸福ですね。僕もJ歴代の外国籍選手で好きなのはピクシーとユン・ジョンファンが双璧です。
評価はB+。

誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)

誇り ドラガン・ストイコビッチの軌跡 (集英社文庫)

*1:イエローカード出し返したシーンは最近のダイレクトボレーと共に焼き付いていますがw

*2:出典はPIXYじゃなくPIXIEだってのも初めて知ったけどな。