村上春樹『一人称単数』文春文庫

ネタバレ一応注意。

短編集。

いつもの、という感じだが、半エッセィ作品にも小説にも、時に珠玉のセンテンスがあって惹き込まれる。「石のまくらに」26pとか、「謝肉祭(Carnaval)」の猿のくだりとか、「品川猿の告白」の猿との出会いのシーンとか…猿多いな。

あとは「ヤクルト・スワローズ詩集」。

 もちろん負けるよりは勝っていた方がずっといい。当たり前の話だ。でも試合の勝ち負けによって、時間の価値や重みが違ってくるわけではない。時間はあくまで同じ時間だ。一分は一分であり、一時間は一時間だ。僕らはなんといっても、それを大事に扱わなくてはならない。時間とうまく折り合いをつけ、できるだけできるだけ素敵な記憶をあとに残すこと――それが何より重要になる。
(159p)

傷心に染みました。心に刻んでサポータ生活を続けます。

評価はB-。