ネタバレ注意。
明治三年、東京猿若町を舞台に、悲劇の名女形・澤村田之助の周囲に起こる連続殺人を描く第六回鮎川哲也賞受賞のデビュー作『狂乱廿四孝』と、その続編で、作者急逝により未完となった長編の合本。
『狂乱~』については、田之助の悲劇や團十郎切腹など、歌舞伎史のソソられる部分をうまく活かしながら、暁斎の幽霊画の絡ませ方など、巧みなストーリィテリングがされていて、デビュー作にして堂に入った小説巧者ぶりが愉しめる佳作。大昔に既読でしたが新鮮に読めました。
「双蝶~」の方は、続編でありつつSF的な要素が絡む新機軸でしたが、それがプロットに絡む妙味が出ないまま中絶してしまっていて、散漫な印象が否めなかった。お米なる被害者の造形が面白かったので、どういうホワイダニットだったのか、読みたかったな…。
評価はC+(前者のみ再読)。