村上春樹『女のいない男たち』文春文庫

ネタバレ一応注意。

「女をうしなう」ことをモティーフとする短編集。

映画観た後に読むと、原作はよりシンプルで、映画がこの選集を換骨奪胎するアイデアに至ったのも頷ける。それぞれのお話、ちょっとフックが淡泊な印象はあるけど、「木野」に描かれる情景の空恐ろしさ、表題作で魅せる比喩表現の至芸、「シェエラザード」のシチュエーションの妙、見所は多い。

そして何より、磨き抜かれた水のような、端整を極めた文章表現をするすると呑んでいく体験は、この作家以外では得られないもの。変わらぬオンリーワンです。

評価はB-。