皆川博子『双頭のバビロン』創元推理文庫

ネタバレ注意。

19世紀末のウィーンに生まれた癒着双生児のゲオルクとユリアン。生き別れとなった二人の、世紀と大洋の東西を流転する、数奇な運命を描く長編。

皆川御大らしい耽美性、妖美なイメージと、黎明期ハリウッドの、あるいは魔都上海の猥雑な熱気を伝える歴史伝奇興味、いずれも満たされる大作。

しかしところどころで筆が走り過ぎというか、テンションに置いていかれる場面があって、御大の小説にしては、ちょっと緊密さ、稠密さに欠ける印象が否めない。

癒着双生児ネタも、映画を軸にした歴史伝奇ってのも、既視感があったりするからなー。

評価はC。