京極夏彦『文庫版 書楼弔堂 破曉』集英社文庫

ネタバレ注意。

明治二十年、東京郊外の異様な書舗、「弔堂」を訪れる人々を描く連作。

日本の近代化…文学、芸術、学術…の裏に、こうした存在と、そこで商われる「本」があったという想像は愉しいし、また連作の趣向として、様々な近代史の立役者たちの肖像が刻まれていくのもワクワクします。「探書陸 未完」においては別シリーズスピンオフ的なサービスもあったりして。

なので愉しく読みはしたのだけど、事前に期待していたようなビブリオマニアックな要素は若干物足りなく感じたのと、個々のドラマはちょっとおとなしすぎたかな、という印象はある。近代日本の知識人の姿を描いたオトナの小説なので、そのシックさは魅力と捉えるべきかもしれないが。

大塚英志とかだと、もっとサービスしてくれるんだけど…まあ、その重厚版のようなイメージですな。

評価はC+。