石田衣良『ドラゴン・ティアーズ ― 龍涙 池袋ウエストゲートパーク9』文春文庫

ネタバレ注意。

「おれも池袋でしのいでいる。金をとらずに、この街の問題を解決しているトラブルシュータ―の噂はきいている。そいつは面子と自分の正義をなにより大切にする、中国人みたいな日本人だとな」
(表題作、264p)

あ、なんか今回イタいモノローグなくていいな、なんて思いつつ読んでたら、ラストの表題作でまんまと泣いてしまった。社会性もヴィヴィッドだし、チャイナマフィア絡みで緊張感あるし、リンもクーも素晴らしい造形だし、カーチャンの絡み方と、ラストシーンは出色。

やっぱいいなーIWGPはよぉ、と、本当に久々に思わせてくれる快作でした。

おれは思うのだけど、今必要なのは見えないものを見る能力で、想像できないものを想像する馬鹿力なんじゃないだろうか。そうした無茶な力を育てなければ、おれたちは目のまえで起きていることさえいつか見えなくなる。
(「家なき者のパレード」、71p)

評価はB。