S.フィッツジェラルド/村上春樹(編・訳)『バビロンに帰る ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック2』中公文庫

ネタバレ一応注意。

短編のコレクションに、村上春樹によるノートとエッセィを付す。

世界恐慌前後の、どこか空々しく浮ついた雰囲気を伝える物語は、スタイリッシュでリリカルで素晴らしい。訳文はたびたび語られる思い入れの通り、流麗で端整で、称揚してやまない作者の天才を余すことなく映し出している(ものと感じられる)。表題作は、昔他の人の訳で読んだ時は何も思わなかったけど、今回はなんともせつなく胸に迫った。

天才が天才を知る、という、リスペクトフルで幸福な仕事。滞米エッセィも面白くて、アメリカ行きたくなった。せめて映画でも観てやれと思ったら、全然雰囲気違う映画をチョイスするという痛恨事。

評価はB。