高野史緒『カラマーゾフの妹』講談社文庫

ネタバレ注意。

カラマーゾフ事件」から13年後、内務省特別捜査官となったイワンが事件を再調査する、パスティッシュ長編。

丹念な考証がされ、文体も堅牢で安定感がある。知的興奮を思うさま喚起してくれる、好パスティッシュ。そしてそれだけでなく、中盤以降は物語が大きくドライヴして、特にアリョーシャを中心にした展開は、SF/ファンタジィ/架空歴史の面白さに満ちていて、非常にワクワクさせられました。革命ネタなんてツボすぎてびっくりしたわ。

「真相」におけるスメルジャコフの存在感なんかにも感心したけど、「妹」についてはちょっと消化不良だったかもな。でもまあなんにせよ、貫禄を感じさせる傑作です。乱歩賞の冠はむしろもったいないぐらいかもな。

評価はB。

カラマーゾフの妹 (講談社文庫)

カラマーゾフの妹 (講談社文庫)