三津田信三『水魑の如き沈むもの』講談社文庫

ネタバレ注意。

奈良の山中、「水魑様」を信仰する山村での「神男連続殺人事件」に挑む、刀城言耶シリーズ第五長編。

…なんつーか、一生懸命考えました、って感じのプロットが開陳されるだけの解決もアレだったけど、七百頁を超える大部の半分を過ぎるまで本筋の事件が起きない、それまでの冗長さに正直辟易してしまった。村の縁起なんかはまだしも、少年視点の怪奇冒険譚とかどうでもよかったわ。こういう周縁を読ませる力においては、やっぱ島荘って偉大だよな。

文章や雰囲気作りがどうにもチープに感じて、七百頁読ませるだけのものになっていない。《六十代半ばくらいの痩身ながら無駄な贅肉を削ぎ落として鍛錬した感じの眼光の鋭い老人が仁王立ちしていた。》(304p)とか、キツいっす。…このあたりは百鬼夜行シリーズとの埋め難い差だな。

評価はC。

水魑の如き沈むもの (講談社文庫)

水魑の如き沈むもの (講談社文庫)