連城三紀彦『わずか一しずくの血』文春文庫

ネタバレ注意。

日本全国に女性の切断死体がバラ撒かれる事件と、ある男の「復讐」を描く長編。

怪作です。見た目これ以上なく派手な事件…バラバラ殺人と死体の「一人時間差」…と、官能・愛憎劇の耽美性、警察小説としての渋みと、要素がそれぞれトガった主張をしてて、噛み合わせも悪くて読み難い。

どこに力点置いて読んだらいいんだ、という困惑と共に読んでいくことになるけど、その迷宮の奥で明らかにされる「社会派」ぶりには、だからこその衝撃がある…これがやりたかったんか!と。斬新でぶっ飛んでるプロット、納得させられてしまうのは筆力だろうなあ。

端整な職人肌のイメージをもってた作家だったけど、少なくとも没後文庫化の作品では、島荘も顔負けのラディカルなパワー型が露わになっとるね…『女王』もそうだったけど、正直求めてるものではなかったりするw

評価はB-。

わずか一しずくの血 (文春文庫)

わずか一しずくの血 (文春文庫)