ネタバレ注意。
アウシュヴィッツ・ベルナベウ収容所で「タトゥー係」になる主人公と、そこで出会う女性を中心に描かれるドラマ。
極限の悲惨・惨苦が描かれていながら、犠牲者の目から描かれるホロコーストの風景が、奇妙な透明感…透徹さにつつまれているのはどうしてなんだろうなと思う。『夜と霧』とか、数冊読んだだけなんだけど。
実話の聞き取りベースなだけあって、ドラマとして説明不足だったり、スペクタクルに欠けて感じられる部分はあるけど、その分、極限状態で生まれる交情や、それを希求する人間の性がリアルに立ち上がってくる作品。物語の必然性、ドラマの要請、という意味では、ラリとギタのラブストーリィはもっと描写構築されるべきなんだろうけど、そういうことじゃないんだな。
そしてそれを補完してくれる、夫妻の子息による結びの言葉が、めちゃくちゃ感動的で泣いた。歴史上の悲劇における無記名の被害者ではなく、心の通った人間としての姿を、この上なく鮮烈に照射している。
ここまで含めての作品…いや、人生、だわ。
記録のみ。
- 作者: ヘザー・モリス,金原瑞人,笹山裕子
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2019/09/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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