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貧困の中にあって、支え合いながら生きる「家族」の姿を描くホーム・ドラマ。第71回カンヌ国際映画祭パルム・ドール。
優しい映画だなあと思う。描かれているのは端的に犯罪だし、家族悲劇だけど、そこに注がれている眼差しは、衒いなくまっすぐで、どこまでもあたたかい。もしそこにシニシズムの陰を見るなら、上述の梗概をプロパガンダにして、社会格差を生産し続ける犯罪的な厚顔に対してのものだろう。作品を観た人なら、そうした「家族神話」がいかに巧みに反転させられているかは自明のことだ。
俳優陣はいずれも素晴らしい仕事。樹木希林は全編オーラ満開だったけど一番は砂浜での横顔、リリー・フランキーは取り調べのシーン、安藤サクラは面会室もさることながらやはりゆりを抱きしめるシーン、松岡茉優は全編エロ可愛かったけど一番は「4番さん」とのシーン、それぞれ息を呑むような凄みがあった。
是枝監督作品は『幻の光』『ワンダフルライフ』『DISTANCE』あたりしか観ていなくて、それらの印象からその後途絶えていたのだろうけど、この作品の浸食力に触れた後では、『誰も知らない』とかにも遡らざるを得ない。乏しい映画遍歴で言うのも憚られながら、心情描写の繊細さ、その共感性においては、やはり一流の邦画に勝るものはないなと思います。
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