清水潔『殺人犯はそこにいる』新潮文庫

ネタバレ注意。

足利事件」を含む、「北関東連続幼女誘拐殺人事件」と、それを取り巻く刑事司法の闇に迫るノンフィクション。

予想してはいたことだけど、昏い怒りに胸を焼かれるような思いがします。「力」を持つ責任に無自覚な連中の、愚昧と短絡、怠惰によって、一人の人間の尊厳ある人生が、完膚なく破壊されてしまうということは。日本の警察が優秀だとかいう幻想、それは司法や政治経済含めた社会すべてを覆っている共同幻想と思考停止の、その一片の縮図でしかなくて、そのことにさらに暗澹としてしまう。どこから手付けたらいいの? マジでこの国。

ノンフィクション作品としては、詳細で説得力に満ちた事件の追究部分はもちろん、ジャーナリズムそのものを主題とする部分にも迫力があって、イッキ読みできる素晴らしいものでした。日テレに対する見方が若干変わりました。

「文庫X」、いい仕事だったなー。

評価はB+。

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)