小池真理子『無伴奏』集英社文庫

ネタバレ注意。

1960年代末の仙台を舞台にした、青春恋愛小説。

先日読んだ新書で、作者があの時代に仙台で女子高生活動家をやってた、その自伝的長編って紹介があって、ぜひ読まねばと思っていたのです…『恋』でのいいイメージもあったし。

だけど…思てたんと違ーう!!

渉・祐之介の「秘密」なんて、こんなん読みたかったんちゃうわ、って拍子抜け以外の何ものでもなかったし、残念だったのは作者の個人的なノスタルジィ以外に「時代」を感じさせるものがほとんどなかったこと。

私は今でも、地面に穴を掘って、気が狂ったようにその名前を叫び続けていたい衝動に駆られることがある。
(7p)

とか、響子の心情や、レイコ、ジュリーとの友情はさすがよく描けているのに、渉の「美しさ」の描写とか、恋愛の情景はなんだか借り物めいて、取って付けたようになるのもバランスが悪い。

そうした不安定さも表現の一つなのだろうか…いや、肝心なとこぼやけてるようにしか感じなかったな。

評価はC。

無伴奏 (集英社文庫)

無伴奏 (集英社文庫)