山口芳宏『雲上都市の大冒険』創元推理文庫

ネタバレ注意。
戦後混乱期、東北の鉱山都市を舞台に、密室からの人間消失に始まる連続殺人を描く本格ミステリ活劇。第17回鮎川哲也賞
松尾鉱山をモデルにした舞台立てや、消失トリックの凄絶な発想など、惹かれる部分がないではないのだけど、その雄大な構想、時空間的なスケールに筆力が追いついておらず、全体にチープな印象になってしまっているのが残念。「膝が悪かったから」とかってキモの部分めっちゃ適当だったり、座悟朗の情念、令子や洋平の行動の迫真性→納得性、いずれも物足りない。
レトロでユーモラスな雰囲気にするか、おどろおどろしい怪奇色打ち出すか、どっちつかずで中途半端なことになってるな…こんなこと言うのもアレだけど、たとえば天藤真の筆で読んでみたかったような。
評価はC。

雲上都市の大冒険 (創元推理文庫)

雲上都市の大冒険 (創元推理文庫)