竹本健治『涙香迷宮』講談社文庫

ネタバレ注意。
黒岩涙香が山中の「隠れ家」に遺したいろは歌の暗号と、現代の殺人事件が交錯する、牧場智久シリーズの長編。
このミス一位なんて取るとまあ、文庫化も早いし、あれこれ復刊文庫化なんかもされて、喜ばしい状況とは思いますが、この作品に関して俺は、いろは歌をこんだけヒネった「労力」以上の価値を見出せませんでした。そもそも暗号ものにはまったくテンションの上がらないヒトだし、殺人の謎や犯人像もチープに過ぎると思う。
まあ一番気に入らなかったのは、周りの人間たちがキャンキャンと名探偵をおだて上げる、そのうすら寒いテンションだったのだけど…『匣』の作者には、こういうの書いてほしくないなあと。
妖怪づくし(166p)だとか海賊たちの歌(188p)だとか、キマったいろは歌には感心しましたけれども。
評価はC。

涙香迷宮 (講談社文庫)

涙香迷宮 (講談社文庫)