歌野晶午(ほか)『川に死体のある風景』創元推理文庫

ネタバレ注意。
「川」縛りの競作短編集。
「川」がトリック/プロットに不可分なもの…歌野「玉川上死」とクロケン「水底の連鎖」…ほどつまらないってのは残念なところだけど、綾辻の深泥丘シリーズ「悪霊憑き」のホラー趣味とか、有栖川「桜川のオフィーリア」の雰囲気センチメントとか、他の要素に逃げをうたずに、真面目にトリック・ミステリやってるだけ好感持てるよ。川トリックって鮎川御大がやりまくってるから難しいよね…存命なら一本これぞってのを読みたかったが。
大倉崇裕の山岳ミステリシリーズ「捜索者」が一番読み応えがあったけど、同時に一番「川」関係ない。佳多山大地「この世で一番珍しい水死人」は、マフィアの大物が好き勝手してるコロンビアの刑務所、って舞台立ての妙味があって個人的に一番愉しかったけど、「画」のスケールの割に謎の設定が小さく感じられて、かなりもったいない。評論家としての活動しか知らなかった作者の実作、こっちも十分期待できる出来だと思ったけど、世界彷徨探偵って設定は梓崎優にやられてまったな…。
評価はB−。