J.V.ラング(編)/小俣和一郎(訳)『アイヒマン調書 ホロコーストを可能にした男』岩波現代文庫

ネタバレ特になし。
アイヒマン裁判における、イスラエル警察の尋問記録。
自分はシオニストであり、「移送」に関わっただけ、「最終解決」の詳細については関知せず、命令に従っただけの歯車に過ぎない…一貫してそうした責任回避の論法を繰り返すアイヒマンに対する、尋問官レスの冷厳な尋問術が頼もしい。
罪の軽重は比べるべくもないにせよ、権力欲・出世欲による官僚的な忖度の構図、公文書軽視(あるいは意図的なオミット)、その構図の頂点で居直る誇大妄想狂の厚顔と、あまりにも既視感があって暗澹たる気分になった。日々ウンザリさせられている現代の「国家指導者」と「親衛隊」たちにも、早くモサドの手が伸びてほしいものだと思う。
《犠牲者たちに》の献辞の重さの前には、どうでもいいことではあるけれど。
記録のみ。

アイヒマン調書――ホロコーストを可能にした男 (岩波現代文庫)

アイヒマン調書――ホロコーストを可能にした男 (岩波現代文庫)