ネタバレ注意。
1920年代のシンガポールを舞台に、現地の顔役として成り上がる日本人青年と、彼が巻き込まれる殺人事件、逃亡劇を描く長編。
魑魅魍魎蠢く現地人と華僑、そこで一旗揚げようと勇む日本人、本国から流れて辿り着いた植民地で倦怠の日々を過ごす英国人…視点を様々に切り替えつつ、猥雑なエネルギィに溢れたシンガポールの時代と風俗が活写され、息もつかせぬオリエンタル・サスペンス・ミステリに仕上がっている。クールながら一本気な主人公・林田の造形も、なかなかに卓抜なヒロイズム。
かなりテンション上がって読んでたので、散々盛り上がった割にラストは尻すぼみに感じてしまったのと、史実サスペンス好きとしてはそっち路線でもっとくすぐりが欲しかったようにも思うけど、その物足りなさは小説としての質の高さゆえのさらなるハードルか。
端的には、すごく愉しみました。
評価はB。
- 作者: 多島斗志之
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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