今村昌弘『屍人荘の殺人』東京創元社

ネタバレ注意。
大学サークルの面々がコンパ合宿に出掛けたペンションで、あるパニック状況と連続殺人に見舞われる、第27回鮎川哲也賞受賞作。
年次ランキング総ナメの話題作だったので、読まないわけにいかなかったのです…が、ちょっとハードル上げすぎたかな、という感じ。
特殊状況本格として、非常にソリッドで端整な…見た目に反して硬派なパズラをやっていて、力作だとは思います。それを認めた上で不満な点を挙げると…どうしてもイチャモンめいてしまうのですが…、こういう状況設定の持っていき方であれば、トリック×ロジックに殉じるのは個人的に硬派過ぎて、もっとケレンのあるサプライズ、ロジックの転回が欲しかったという思いがありました。特殊状況本格の偉大な先達…『人格転移』とかには、見えていた景色、支配的だった論理が音を立てて反転していくような快感があったと思うのだけど。
そして対先達という比較論をすれば、どうしたって思い出されるのが『生ける屍の死』であるわけで、この作品のどこかラノベライクな佇まいは、それが新本格パロディという意匠の一つであるとはいえ、作品のアトモスフィア、香気の部分でどうしても物足りないものを感じさせずにはおかないのでした。『生ける屍の死』は、めちゃくちゃかっこよかったもんな…。
まあ、国内本格史上の最高峰と比較するのはそれこそイチャモンでしょうね。単に若干の肌の合わなさを感じたというところです。
評価はB。

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人