中村一義 『海賊盤』

6thフル。
ごめん、出てたのに気づかなくってリリースから一年経って聴くという体たらく…。
ソロ六作目、「大海賊」なるバンド・コンセプトでの作品、前作に比べてもよりポップで風通しがよく、遊びゴコロも横溢した快作です。もちろんそうした中に、独特の言語感覚や歌唱の表現性はしっかりとキレていて。海賊団になぞらえられたところの仲間たちと共に、ポジティブなマインドで音楽を鳴らしてくれている様子が窺えて、微笑ましく嬉しいです。

たまんねぇな! おもしれぇな! 本当に生きるってことは。
たまんねぇな! ぶっちゃけてぇな、盛大に! こんな今また。
大航海で再会の前に、お前だけにゃ言っときてぇんだ。
「絶やすな、君の灯を!」
(「スカイライン」)

コンセプトを体現したポップ・チューン「スカイライン」や「GTR.」あたりのポップネスには問答無用で心浮き立つし、その流れからの「世界は笑う」は、バンジョーの音色も軽やかに、世界観が拡大された感じがして感動的。

「大空へ届くかぁ?」って挙げた頃と同じ手で、
武器を持つくらいなら、手と手を繋げ!
(「世界は笑う」)

その後も「我燦々」なんて勝手に卒業式ムードになって泣けるし、「大海賊時代」も鍵盤走ってて泣ける。「ビクターズ」も高潔な音像で泣ける。「あれやこれや」の詞は全文引用したいレベルで泣ける。

僕らに残るこれまでのあれやこれやと、
僕らに出会うこれからのあれやこれやを、
誰もがホントは、求めてるあれやこれやと、
今、産まれてる、愛みてぇなあれやこれやを。

届く日まで、届けような。
届く日まで、届けよう。あれやこれやを。

ここからだ。
(「あれやこれや」)

『金字塔』から19年。なにせ「大海賊」、「状況が裂いた部屋」からは遥かな隔たりですが、変わらず才気に溢れて瑞々しい彼の音楽と、それに感動できている自分が嬉しい、青春の音楽です。