土屋隆夫『土屋隆夫推理小説集成 3 赤の組曲/針の誘い』創元推理文庫

ネタバレ注意。
選集三巻。
併録長編の共通性、という意味では、今回の二編は家族(ないし夫婦)悲劇。
「針の誘い」は、「赤の組曲」とも共通するところだけど、よくある小さいトリックの積み重ねで長編構成した感じ。早業トリックがちょっと残念で、いい印象の作品ではなかった。社会派の臭みも出てしまっていて、ホワイダニットに関しては、千草検事がすぐ気付くってより、ラストに新商品ドーンて出してオトした方がよかった気が…ラストがあまりよくない。似たテーマの長編連続で読んだので、食傷という意味でこっちが割食ったところはあるかもだけど。
その点「赤の組曲」は悲劇性がシンプルにまとまってて、動機や社会性含めたプロットで読ませるという作家の持ち味がよく表れていたと思う。人物誤認のトリックもキマってるけど、タレントの訛りだの、ビートルズだの、どうでもいい社会批評が顔出してるところは減点材料。まあそういう精神が旺盛な人ではあったんだろうな…気が合わなそうw
編集方針に異議唱えたいところはテーマ揃えて食傷させるところ以外にもあって、まず解説、作品紹介に過ぎないレベルのものを「土屋隆夫論」などと銘打って載せて、選集続刊のものまで含めて盛大にネタバレさせるのやめてほしい。あと言語学的興味に基づくものとはいえ、下ネタ100%のエッセィもいかがなものかと思うよw
評価はC+。