illion 『P.Y.L』

2ndフル。
序盤の印象は、前作に輪を掛けて、さらに実験的。バンドサウンドは見られず、基調となるエレクトロニカのトラックは、ノイズ混じりのインダストリアルな手触りも濃く、Aimerや5lackなど客演も多彩な多才。Aimerは客演でもないと「Told U So」みたいな曲やらないだろうな…。
ただやっぱそういうトガった曲はいまいちノれなくて、シンプルで綺麗な四つ打ちトラックに透明感のあるヴォーカルが乗った「Water lily」あたりが好きなのはわかり切った話。郁子さんのコーラスは相変わらずホーリィで素晴らしい。

うだる日々に浮かない君 横顔に 物語る機微
外の木々に色鮮やかに 黄緑に赤茶紫に
胸の痛み お互いの中に 分かり合いきれるわけもない
だけど でも 今はそれがいい それがいい それがいい

この流麗なリリックを野田洋次郎原田郁子のコーラスで…最高やで。
続く「85」も、大陸っぽいメロディラインや、突如として始まるキラキラしたシンセが印象的な佳曲。詞もかつてのようなピュアネスが詩心に転化した感じがあって素敵です。
かようにどうしてもキャッチィなところばかり聴いてしまう僕は…実際これに続く後半の荘厳な展開もそれほど…、この作品のいいリスナではないと思いますが、野田洋次郎という稀代のソングライタの才能に惹かれる人は、少なくとも必聴の内容と思います。

P.Y.L(通常盤)

P.Y.L(通常盤)