Cocco 『アダンバレエ』

9thフル。
原点回帰したような、バンドサウンド基調の肉体的な作品。前作の自由なモードとは全く違いますが、こうした安定のモードもまた、一貫して豊かなヴォーカルの表現力*1と共に、音楽家としての充実を感じさせてくれます。
ソングライティングの面で、詩の抽象性はちょっと好みではなく、メロディのカタルシスに物足りない部分があるのも事実*2だけど、アルバム通したタイトさソリッドさと、要所要所でのサウンドとヴォーカルの絡みで補うに十分な、ロック・アルバムの佳品。
人を守りも傷つけもする、南国の植物の硬くつよい棘と、その中で血を流しながらも続けられる舞踏。Coccoというアーティストの来し方と、現在のモードとしての強靭さを、見事に表現したタイトルも出色のかっこよさ。

アダンバレエ (通常盤)

アダンバレエ (通常盤)

*1:「ひばり」とか、結構凄いことになってるんですけど。

*2:「有終の美」がちょっとサビ浮いててもったいないと思った。